寅さん「田所教授のすごさ」

 

 

大好きな「男はつらいよ」16作目のワンシーン。下宿している大学で働く筧礼子の素敵な先生、田所教授と寅さんと語り合う。動画後半で寅さんが愛について語ります。下記セリフ起こし⇓

 

田所教授 男と女の愛情の問題は、実に難しくてまだ研究し尽くしておらんのですよ

寅さん 研究しちゃうのかぃ?もっと簡単なことだろぉ

田所教授 簡単?

寅さん 常識だよぉ〜

田所教授 じゃあ君、説明してみろっ!

寅さん いいかい? あぁ〜、いいオンナだなぁ、っと思う。その次には、話がしたいなぁ〜っと思う、ね? その次には、もうちょっと長く側にいたいなぁ〜って思う。そのうち、こう、なんか気分が柔らかぁ〜くなってさ、ああ、もうこの人を幸せにしたいな〜って思う。もうこの人のためだったら命なんか要らない、もうオレ死んじゃってもいい、そう思う。それが愛ってもんじゃないかい?

田所教授 なるほどね〜・・・ 君は僕の師だよ!!!

寅さん なんだい、師って

田所教授 先生ってことだよ

 

文字に起こすと、寅さんの語り口の質が一気に落ちてしまうのが残念。

 

寅さんの言葉は彼の身体から滴り落ちる言葉だからこそ、見ているこっちがつい「ニヤ〜」っと微笑んでしまう。語っている寅さんの後ろにピンぼけになった「おばちゃんの表情」にぜひ注目してほしい。あれは台本読んでるだけじゃない。語ってるコンテンツを完全に身体化しないとスクリーンを介してこっち側にこんなにも伝わってくるはずがない。

 

寅さんの愛についての語りが素晴らしい以上に注目すべきことがある。それは田所教授が寅さんを即座に「師」として仰いだ事実。その寅さんの身体から野生的に絞り出された言葉を浴びせられた教授はすぐさまに己の未熟さに気付き、その場で素直に寅さんを師と仰いだその転換の速さ。

 

学者に限らず一般的に未熟な人間であれば、目の前に寅さんのように語る人間を見た途端に「論理的な説明になってないよ、バカ」で一蹴してしまうだろう。

 

田所教授の掬すべきところは、教授としての集積した知性がありながら、それに固着せず又、誇示せず(「おなら」を各国語で言えることは自慢していたが)その寅さんの非論理性のなかの真理をその語りから素直に感じ取り、それに感動し、直ちに自ら弟子というポジションをとったこと。

 

こんな人を僕は人生で何度拝めたであろうか。拝むと言えば、自分の知性に過剰な自信を持って、他者に一言でも何か言われようものなら即座に「攻撃」としてしか捉えられず、自己防衛体勢に入る人間は多く見てきた。それも反面教師と思えば肯定できる。

 

「学び」の本質、師弟関係の健全な姿についてのすべてがこの数分に凝縮されている。やはり寅さんから学べることは底知れない。

 

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